ホルモン受容体陽性乳がんとは
ホルモン受容体陽性乳がんは、女性ホルモン(エストロゲン)を栄養として増殖します。乳がん全体の70%がホルモン受容体陽性乳がんであり、そのほかにHER2陽性乳がん、トリプルネガティブ乳がんがあります。
ホルモン受容体陽性乳がんの治療法は、ステージ4でも症状がでていなければ、ステージ1~3の治療法と同じになります。
ホルモン受容体陽性乳がんといってもサブタイプを細かく分類すると治療方法が異なってきます。ただ標準治療ガイドラインにおいては、初期治療はサブタイプが異なってもホルモン受容体が陽性であれば同じになります。
ホルモン受容体陽性乳がんの治療の選択肢
ホルモン受容体陽性乳がんは、その特性に応じてサブタイプが3つに分類され、さらに乳がんには陽性、陰性、HER2、Ki-67によってそれぞれに応じた治療法が選ばれます。
サブ タイプ | ホルモン受容体 エストロゲン | ホルモン受容体 プロゲステロン | HER2 受容体 | Ki-67 (増殖力) | 治療法 |
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ルミナルA | 陽性 | 陽性 | 陰性 | 低い | ホルモン療法 CDK4/6阻害薬 化学療法 |
ルミナルB HER2陰性 | 陽性 | 弱陽性~陰性 | 陰性 | 高い | ホルモン療法 CDK4/6阻害薬 化学療法 |
ルミナルB HER2陽性 | 陽性 | 陽性・陰性 | 陽性 | 低~高 | ホルモン療法 CDK4/6阻害薬 抗HER2療法 化学療法 |
HER2 | 陰性 | 陰性 | 陽性 | 低~高 | 抗HER2療法 化学療法 |
トリプル ネガティブ | 陰性 | 陰性 | 陰性 | 低~高 | 化学療法 免疫療法 PARP阻害剤 |
サブタイプによる治療法の違い
乳がんは、ホルモン受容体陽性(ER+、PR+)、HER2陽性、トリプルネガティブ(ER-、PR-、HER2-)などのサブタイプに分類されます。これらのサブタイプに応じて、適切な治療法が選ばれます。ホルモン受容体陽性はホルモン療法(内分泌療法)のみでしたが、新たな治療薬CDK4/6阻害薬が保険適用され、2017年にイブランス(パルボシクリブ)やベージニオ(アベマシクリブ)が2018年に登場したことによって、ホルモン受容体陽性HER2陰性の進行あるいは転移性乳がんの治療に大きな進歩をもたらしました。
私の妻は、ルミナルB HER2陰性タイプの乳がんです。
トリプルネガティブ乳癌の治療アプローチ
トリプルネガティブ乳がん(TNBC)は、ホルモン受容体やHER2が陰性の乳がんで、3つの要素が陰性のためトリプルネガティブといわれ、化学療法以外の治療方法がないことから治療が難しいとされています。TNBCに対する治療法には、化学療法、免疫療法、PARP阻害剤などがあります。
ホルモン受容体陽性乳がんの初期治療
ホルモン受容体陽性・HER2陰性の治療法
ホルモン受容体陽性(ER+、PR+)の乳がんには、ホルモン療法(内分泌療法)+CDK4/6阻害薬が最初の治療となります。
ホルモン療法は、ホルモン受容体陽性(ER+、PR+)の乳がんに対して効果的な治療法です。
ホルモン受容体陽性の乳がんはがんの進行が比較緩やかとされています。閉エストロゲンやプロゲステロンの作用をブロックすることで、がん細胞の増殖を抑えることができます。閉経前だと抗エストロゲン薬 (タモキシフェン) 、閉経後だとアロマターゼ阻害薬(レトロゾール、アナストロゾールなど)が代表的な薬剤です。副作用は比較的少なく、長期間の治療が可能であり、10年間の投薬が必要となります。
私の妻はタモキシフェン(商品名 ノルバデックス)を服用しています。2か月経過して生理が止まってきていれば問題ないのですが、妻の場合は不正出血があったのでLH-RHアゴニスト製剤(商品名 リュープリン)を月1回打ち、落ち着いてきました。
10年前はホルモン療法(内分泌療法)と併用できるCDK4/6阻害薬であるイブランスとベージニオがありませんでした。ホルモン療法(内分泌療法)と併用してCDK4/6阻害薬が登場したことで予後は大きく改善されています。10年生存率のデータがあくまで参考値になる理由がCDK4/6阻害薬、という新薬が登場したからです。
イブランスとベージニオは副作用や服薬の期間が異なります。自分で選択してどちらがよいのか考えて選ぶとよいと思います。腫瘍内科の担当医は効果としては変わらないといっていました。
ホルモン受容体陽性乳がんの再発防止とフォローアップ
乳がんの治療を終えた後も、再発を防ぐために定期的なフォローアップが重要です。
私の妻は初発ステージ4の乳がんのため、寛解を目指して健康管理、食事管理をしています。
がんの好物といわれるたんぱく質、糖質を押さえています。
徹底しているのは、砂糖を取らない。甘味はオリゴ糖。
4本足の動物はあまり食べないようにする。ただ血液検査で白血球の数値が落ちたり、赤血球やヘモグロビン、肝臓数値などバランスを見て、レバーを食べたり、1か月に1回は豚肉を食べる。毎日ランニングマシンで運動する。など、
乳がんになってから健康や食生活を見直しています。これは乳がんの再発防止にも役立つと思い続けています。
ホルモン受容体陽性乳がんの治療最新情報
抗HER2療法(商品名 エンハーツ)を開発した第一三共さんが、2024年3月にホルモン受容体陽性かつHER2陰性の転移性乳がんに係る二次/三次治療を対象とした製造販売承認申請をしました。
ホルモン受容体陽性 HER2陰性乳がんで期待!
抗TROP2抗体薬物複合体
薬品名はダトポタマブ デルクステカン(Dato-DXd/DS1062、抗TROP2抗体薬物複合体(ADC)
ホルモン受容体(以下「HR」)陽性かつHER2陰性(IHC 0, IHC 1+ または IHC 2+/ISH-)の手術不能または転移性乳がんに係る二次/三次治療を対象となります。
つまり、初期治療となるホルモン治療+CDK4/6阻害薬(イブランス、ベージニオ)が効かなくなってきた場合の次の手段として化学療法の前に使えるお薬なんです。
新薬の承認申請から承認まで平均して1年間かかるそうで、申請から3か月経つと審査当局から質問が届き、製薬会社がそれに回答して承認までやり取りを続けるそうです。
ホルモン受容体陽性、HER2陰性は初期治療はよいのですが、次の治療としてHER2陽性の方に劇的な効果をもたらしているエンハーツのような新薬が登場しておらず、私の中でももしベージニオが効かなくなったら薬が少なくなるのでは。と不安に思っていました。
そんな中の新薬申請情報だったので本当にうれしく思います。
承認されれば保険適用になるので、早めの承認をどうぞよろしくお願いします。
ホルモン受容体陽性 HER2陰性乳がんで期待!
たんぱく質分解薬
2024年5月16日、イギリスのファイザーがたんぱく質分解薬(ベプデゲストラント)というイブランスと併用治療できる新薬の有効性、安全性を検証した第1b相試験(NCT04072952)の結果を公表しました。
「複数治療歴のあるエストロゲン受容体陽性HER2陰性進行乳がん患者に対するイブランス+Vepdegestrant併用療法は良好な抗腫瘍効果を示し、忍容性も良好でした」と結論付けた。
ファイザー社プレスリリース
とあるので、期待できそうです。治験は第3相まで続くので承認に向けて良い結果が出続けることを祈ります。
ホルモン受容体陽性 HER2陰性乳がんの治療法まとめ
ホルモン受容体陽性 HER2陰性の治療法含め、各会社で乳がんやがんの新薬開発を進めていて、がんを取り巻く環境も大きく変わってきています。
ステージ4乳がんになってもあきらめない理由、またできましたね。
ポジティブに健康管理して副作用に負けない体をつくっていけば、寛解も目指せるはずです。
一緒に頑張りましょう。